理事長ご挨拶

 

この度、第8代日本NO学会理事長を拝命いたしました東北大学大学院医学系研究科の本橋ほづみです。2000年5月に設立された日本NO学会は、国内外の研究者間に学術交流や情報交換の場を提供し、日本のみならず世界のNO研究の進歩に大きく貢献してきました。最近では、活性酸素種、活性硫黄・超硫黄分子種とのユニークな相互作用も明らかになり、NO研究はレドックス生命科学という融合的新たな領域へと大きな変貌を遂げつつあります。これは、我が国から世界に向けた力強く新しい学術の潮流です。その様な学術変革の一翼を担ってきた日本NO学会の代表を務めさせていただくことになり、身が引き締まる思いです。

一酸化窒素(NO)は、1980年代後半に、生体内情報伝達物質として発見された分子で、多彩な生理活性を有しています。1998年には、内皮依存性血管弛緩因子としてNOの役割を解明したIgnaro, Furchgott, Muradの3名の研究者にノーベル医学生理学賞が授与されました。それ以降も、NOにより発現される様々な生理・病態生理活性の解明が進められ、化学・生物学・医学・薬学・農学など広い領域に大きな影響を与えてきました。本学会の理事長は、初代の前田浩先生(熊本大学)から、谷口直之先生(大阪大学)、横山光宏先生(神戸大学)、赤池孝章先生(熊本大学)、下川宏明先生(東北大学)、上原孝先生(岡山大学)、平田健一先生(神戸大学)と引き継がれ、この分野の研究をリードされる御高名な先生方が務められてきました。特にユニークであるのは、NO研究では、学会員を中心に多くの分野にわたる基礎研究と医学臨床研究が融合しながら発展してきたことです。基礎研究から明らかになった知見が、呼気NO検査(気管支喘息診断)法の開発、NO吸入薬やPDE5阻害薬、sGC刺激薬など、しっかりと臨床応用への道筋がつけられ、医学に大きく貢献していることは特筆すべきです。

現在、NOと他の生理活性物質との相互作用がおりなす「レドックス超分子」科学という視点がうまれつつあります。本学会には、このような我が国発の高い独創性を有する研究の潮流を展開するハブとしての役割が求められているのではないかと思います。日本酸化ストレス学会や生化学会、薬学会などの関連学会との研究成果の共有を含めて、新たな学会のあり方/発展性について、みなさまと議論をすすめていきたいと考えております。これから2年間、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

日本NO学会 理事長
本橋ほづみ
(東北大学大学院医学系研究科
医化学分野・東北大学加齢医学研究所 遺伝子発現制御分野 教授)

 

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